「ほしのこえ」

今更の感想だけど、この作品を個人で作成したってのは、凄い。もろに庵野の影響を受けていてどこかで観た事のある画や演出だったりするが、そんな事を超えてこの作品の構成は凄いの一言につきる。プロだとかアマチュアだとかは関係ない、物語の作りの秀逸さはいくら評価してもしきれない。ファーストコンタクトと言う大きくてありきたりな世界に、星と星の間でやりとりされるメールと届ける想いというあまりに個的な世界を折り込み、それでも卑屈なオタク系の世界にする事なく成立させている。あまりにもナイーブ(センシティブではない)な感情だけれど、そのナイーブさこそがこの物語の哀しさと希望になっている。泣いたよ。最後の最後に二人の声が重なるシーンは、アニメ作品の中での屈指のできだよ。
個人制作のアニメだと言う事も凄いことだけれど、レイアウトや、色遣い、そして繊細な物語、これらの質も高い事がなんとも良い。とにかく自慰行為に陷らない作品作りは共感がもて、高く評価できる。あの空の色の美しさ、異星人の遺跡の質感のリアルさ、はどうだ。作者独自の空気を感じるよ。庵野もどきなんて言うなよ。この空気の美しさは、庵野や宮崎にはないよ。それだけでも一見の価値有りだし、次回作は空が大きな要素になっているのも楽しみだ。
それにしても個人のPCでここまでのアニメができると言う事は、プロの現場の人達は恐怖して良いと思う。金取って仕事してるならこのクオリティをどうやって超えて行くかは、相当の根性がいるぞ。現場の作業をする人間って言うよりも環境と金を提供するプロデューサの問題だけどね。