「サラマンダー」

古代に眠りに入ったドラゴン逹が、現代のロンドンでの事故をきっかけに目覚め、世界を破滅寸前までおいやっている世界。生き残った人間たちとドラゴンとの闘い。ストーリーはそれだけだ。これ以上何もいらない。”怪獣映画”の王道のストーリーじゃないか。嬉しくなる。よくこんなシンプルな話で勝負しようと思った。企画の段階から志や良し。いらんのだよ、余分な人間ドラマや社会的な悩み風の話なんて。
ゴジラだって、古代生物が原爆実験で変異し目覚め東京を破壊しに上陸してきた。東京・日本の存続を賭け日本人が闘う。て同じようなシンプルのものなんだから。原爆と言うメタファーがあるからゴジラが高尚だって訳じゃない。上下はないんだから。それぞれ方向も違うしね。
まあ「サラマンダー」の方は、どこか食い足りないなんだけどね。ドラゴンもドラゴンだし、CGも良くできている。それでも物語に深みがないって言うか、盛り上がりに欠けるって言うか、もう一押し足りない。ドラゴンと生き残った人類(イギリス人ね)との緊張感も表し切れてないし、怯えながら生きる人達の生活がリアルじゃないんだよな。恐怖しながらも強くはびこっている人間って描写が欲しかったな。それでも人間は生きるんだ、でも恐怖は並大抵じゃねえんだよって事があって、無謀にドラゴンに挑むアメリカ人の単純さと、最後にはそのアメリカ人をリードするイギリス人のリーダーって構図が生きてくるのに。なんか何で生きていこうってがんばっているのかってのが全然伝わってこないんだよ。生き残っているから生きていますじゃしょうがない。
とここまで書いているけれど、けっしてこの映画は嫌いじゃない。理解不能で理不尽な暴力・恐怖としてのドラゴンの描写は観ていて心地良い。ヒューマニズムが通じない恐怖と対峙、そして克服。そこはしっかり出来ていると思う。ドラゴンの存在がまずちゃちじゃないのが、良いよ。だからこそもっともっとドラゴン見たかったな。どうしても生理的にあわないのは荒廃後世界があいかわらずマッドマックスな事。ほんと西洋人はこういう未来しか想像できんのか。あまりにもステレオタイプな造作で苦笑するしかなかった。
イギリス英語は聞きづらい。だからこそこの映画の世界に言葉があってるんだな。これがヤンキー英語だったら、興醒めだ。