「青の炎」

蜷川演出に興味があったのに未観だった。原作は主人公の切なさが胸に残る佳作だった。映画版はジャニーズの二宮、つんくの松浦と言うある意味王道のアイドル映画のようなキャスティングで、そこがまた興味ある所だった。あえてアイドル二人を主演に据える事で、どうやってこの原作の切なさを映画としてまとめあげるのか。
主演の二宮は良い演技をしていたと思う。松浦はまあこんなもんだ。少ない台詞に救われている感じはまぬがれない。鈴木杏の存在感の方が勝っている。主人公の内面を語る言葉が直接的に訴えてくる分だけ小説の切なさの方がストレートだったけれど、映画は映画で健闘していたと思う。カセットテープに吹き込まれる少年の言葉。最後に美術室に置かれているテープレコーダー。ラストシーンに流れる少年の声。淡々としている中で静かに切なさが心に伝わってくる。でも自分勝手だと言ってしまいたくなるほど、自己完結のナイーブさでもあるんだけどね。
今時の少年がどうなのかは知らない。かって少年だった大人、少年と言う幻想の時代を生きた記憶、「少年」の持つ・持っていたと記憶している、時に暴力的にすらなる繊細さ・傲慢と紙一重な繊細さを、感じる事はできた。
物語の重要な要素になる義理の父と言う他者、大切な母が自分に向ける事がない女の部分で愛していた余所者に対する疎外感と敵対感がもっと細やかに表現できていたら主人公に感情移入する事ができただろうけど、その部分が弱い。少年の切なさは伝わってきても、彼に感情移入する事ができなかった。だから静かに自分自身に対する決断を下した彼に涙する事はできなかった。