「ALIVE」

北村龍平の「VIRSUS」に続く第二作目。スカイハイの高橋ツトム原作のマンガの設定を大きく変更し、映画独自の世界を構築している。
復讐と殺意と生きる事の物語だ。
アクションはかなりがんばっていて、タメとスピード、上下左右の立体的な動き、カメラ割りの大胆さなど見るべき所が多い。CGも日本のレベルで言えば極上と言うわけではないけれど合格点だろう。
セットも照明も小道具も役者も全てがんばっている。良い物を造ろうと言うチームの思いが伝わってくる。
でも、全て見終わると、どこかひとつ物足りない。「VIRSUS」のストーリーではなくシンプルな勢いが全てで、そこを堪能するという物でもない。
原作のシンプルで力強い復讐・殺意の心情が残念ながら、もうひとつ伝わってこないのだ。
主人公のギリギリで絶望的な心情=復讐心、最愛の女性を受け入れる事ができなかった自分への憎しみ、それらが絡み合い理不尽な状況に追いやった研究者・国への殺意、そうした感情が、画面から伝わってこないのだ。主人公が今どういう気持ちでいるかは頭では理解はできる。が心に響く、感情移入してしまうようなリアルさ、画面がないのだ。主役の榊英雄は強い演技をしているが、彼の演技だけでは共感を産む芝居にはならなかった。アクションの激しい動きや鋭角的なストーリーの大胆な演出に大しての心情を描いていく細やかな演出が欠けている。だから残念な事に、ラストシーンの主人公の台詞に胸を熱くする事ができなかった。
それ以外は気合いのはいった作品だっただけに、凄く惜しい。
既存の日本人監督逹とは違うシステムから飛び出してきた異端の才能を持つ監督で、邦画らしからぬ娯楽作品を撮れる可能性を持つだけに、動きとは別に静な部分で静かに深い心情を語る演出を深めて欲しい。
それでもアクション娯楽としては、良くできていると思う。最後の悪役のモンスターとかありきたりの部分も、いくつかあるが、それでも一見の価値はあると思う。
DVDで観たのだけれど、映像特典の監督のインタビューと、メイキングの監督の説明が熱い。特典はどうでも良いものが多くて普段見る事はほとんど無いんだけれど、このインタビューと作品のディテールを語る監督は、なかなか良かった。彼がここで語る通りに作品が仕上がっていたら、大傑作になっていたのに、そこが残念だ。
■DVD ALIVE 特別プレミアム版...