『探偵家族 冬の事件簿』 マイケル・Z・リューイン

ひさしぶりのルンギー一家のお話。三世代の大家族が営む探偵事務所の、騒動記。
リューインと言えば、ソフトボイルド探偵小説の大傑作アルバート・サムスンシリーズだが、このルンギー一家のシリーズは、かなり毛色の違う作品だ。三世代同居の家族がそれぞれの事情を大切にしながら地味な事件を解決していく、その樣がサザエさん一家を見ているような気分にさせる家族小説だ。
正直に言えば、このルンギー一家は、もしこの中に産まれていたとしたらかなりうざったい。夕食に女性を三ヶ月連れてこないだけで、鬱に陷るような母親がうざったくないわけないではないか。それでも最終的にはこの家族のイタリアンなアットホームな感じには心地よさを感じてしまう。不思議だ。
ポケベルを使った脅迫、ブティックを無言で脅迫する小汚いストリートガールズ、何十年かぶりの殺人事件、娘の売春疑惑、息子の不登校。仕事プライベートそれぞれで家族にやってくる事件が同時進行に語られ、やがてリューインらしい解決を迎えていくのは、読んでいて楽しい。
今回は、探偵家業を始めた親爺さんの、末息子サルバトーレを巡る活躍と熱い怒りにノックアウトだった。息子の望む将来を認める、親爺の様子にはちょっと泣けた。
サムスンの新作が出るまでのつなぎのつもりで読んでいたシリーズだったけれど、このシリーズも次が待ち遠しい。
「はっ!」

■ハヤカワ・ミステリ 『探偵家族 冬の事件簿』