『快楽主義の哲学』澁澤龍彦

ずっと買いっぱなしで積んであった一冊をたまたまチョイス。カッパ・ブックス用に書かれたエッセイだと言う。60年代から70年代にかけては過激だっただろう言葉も今ではソフトに感じられるのはご愛敬だ。
しかしここに書かれ否定されているような事柄が、どれだけ今でも巷にあふれている事か。嘆かわしい。
言葉としてはありきたりに見えるが、その実当時よりも今のほうがもっともっとどうしようもない奴らが溢れてる。退屈でありきたりの連中の、個性的と言う名の凡庸さは、救いがたい。奇をてらうと言う行為も今ではすっかり、ありきたりの愚かさだ。
快楽主義。なんと自由で不自由な生き方か。言葉の本来の意味を消失して大衆消費の手垢にまみれた「快楽」と言う言葉を俺達は取り戻さなくちゃいけないよな。ありふれた快楽なんて、どうでも良いと言うか害悪だ。
セックスだってなんだって遊びは一生懸命じゃなきゃいかんと言うことだよな。
序に寄せた三島由紀夫の一文も含めて、高度経済成長期のベストセラーシリーズ、カッパ・ブックスらしい軽さが、逆に真摯な二人の言葉の核と遊び心に触れる事ができて嬉しい。