『ハイウイング・ストロール』 小川一水

爽快だ。空を飛ぶ男逹の話ってのはどうしてこうも爽快なんだろう。ソノラマ文庫と言う老舗のティーンズ向けの出版だけれど、普通の小説読みに読んで欲しい。できれば男の子心を忘れていないそこの君に!
人類の多くが滅んでしまった遙か未来の地球。重素の雲の上に浮かぶわずかに残された地面に暮らす人達。重素の海の中にある礁には、浮獸と呼ばれる生物が住んでいた。そんな浮獸を飛行機に乗って狩るハンターがショーターだ。物語は、学校にも家にも馴染めない少年が、年上のショーカーのもとに拾われやがて、一人前のハンターと男に成長していくと言うものだ。
正統的な少年の成長物語。そこにあるのは、社会からはみ出し者だとされている男の子が、年上のまっとうな大人逹の中で葛藤と闘いと努力と恋を通して一歩ずつ自分の世界を獲得していくと言うものだ。設定こそSF、ファンタジー、ライトノベルズ風だけれども、男の子をめぐる話は、まっとうな小説だ。口うるさい年上の女性への尊敬と、同情と恋。圧倒的に自分んよりの高い能力と力を持つ大人の男への敗北と勝負。正直な性根と熱さが、やがて実を結び少年の力になっていく。
これだけストレートな少年の物語だけでも嬉しいのに、その上飛行機だぜ。ジェット機でもなければ戦闘機でもない。複翼機や単翼のプロペラ機、まるで「紅の豚」のようなタイプの飛行機が縦横無尽に青い空を駆けめぐる。これで熱くならなきゃ男の子じゃないぜ。
そして読後の爽快感。男の子でいて良かった。
本文中のイラストがいかにもって感じで邪魔だし、登場人物の一人がいかにもロリ狙いのキャラでうざったいが、それは出版する際の戦略として割り切って読めばいいし、そんな些細な事をどうでも良いと感じさせる魅力に溢れている。
小説が好きな男の子必読だ!

■(AMAZON)ソノラマ文庫 ハイウイング・ストロール (1027)