ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還

三時間半のあっと言う間。前二作で広がった物事が、あれよあれよと着地していく。
フロドとサムの旅も、アルゴランの物語も、仲間逹の活躍も、王と次男の物語も。
原作にあるほとんどのエピソードをこれでもかと詰め込んだがために、ためも間もなく次々と繰り出されるエピソードについて行くだけで、長いはずの上演時間が過ぎていってしまう。
登場人物それぞれの抱える物語もあるにはあるが、これだけ急速に展開し、ディテールをカットされてしまっては、伝わる物も伝わらない。スペシャル・エクステンデッド・エディションでは、きっちりとその辺りもフォローしているんだろうけど、それはこの長い映画を観ている観客に失礼だ。感情移入しようにも、こうも中途半端に展開されてはできるものじゃない。少なくても公開されるものが全てだ、それくらいの志で思い切ってエピソードを整理して欲しかった。監督が原作にぞっこんなのはよく分かるけど。あくまでも壮大な原作をリアルなビジュアルとして提供するための映画、それがこの三部作だと言い切って良い。
この映画は、ビジュアルの壮絶さに尽きる。原作を読み頭の中に広がった中つ国の世界が、一つ一つ目の前で展開されていく。CGを駆使したビジュアルは大きなスクリーンでぜひ見るべきものだ。ゴンドールの大地に広がるサルマン軍のオーク逹、セオドア王の軍勢、象や犀やら翼竜逹、画面を見るだけで鳥肌が立つほどのスケール感だ。ゴンドールの都も美しい。
何はさておき、映像の凄さに犯され続ける三時間超の映画だ。見た後でへとへとになるけれど、この映像に犯される感じこそ、映画の快楽の一つだと俺は思う。
途中からしくしくと観客の一部が泣いている音が聞こえた。どこでそんなに泣きたくなるの?こんな中途半端なエピソードで泣くなよ。まあ人それぞれだけど、興醒めだぜ。って思っていたら、ゴンドールでのフロド逹ホビット四人とアルゴランのエピソードには思わず泣けた。演出のせいだけれど、このシーンは良い。ピーター・ジャクソン侮り難し。これは負け惜しみ。

明日は「キル・ビル Vol.2」か「キャシャーン」に行ってきます。ええ、暇なゴールデンウィークですよ。