『さぁ、クルマで出かけよう』 栗本槇一郎

と言うことで、上から続いて久しぶりにページを開いた。
俺のベストカー批評本だ。評論やレビューじゃない。あくまでもクルマを批評している本のベストだ。
15年経った今でもこの本の中で取り上げられている、人の身体感覚とクルマとの関係に関する考察は、有効だし充分にスリリングだ。もちろんクルマを運転している際には、こんな当たり前の事を、ぐだぐだ書く必要無いじゃないかとも思う。
扱われているクルマのほとんどが、今では残っていない。が別に個別のクルマのガイドを期待して読む本じゃない。スペックや馬力、カーブランドの価値を確認し、一般のカーマニアが陥る数字至上主義や知識優先の愉しみを満たすものでもない。
そんなのは”提灯”カー雑誌に死ぬ程記事が載っているし、読んでも何の感動も与えてくれない。この数ヶ月はじめてしっかりとカー雑誌やウェブを読んだが、どれもこれもほとんがスタイルも哲学もない、つまらない記事ばかりだ。特にユーザが語る掲示板は最悪なものばかりだ。クルマ好きだと言いたくなくなる。
記号としてのクルマ。この点から批評され展開される哲学的考察。クルマ好きだと自認して、それでも専門誌の記事なんてつまらないと感じている貴方にこそ読んで貰いたい。かっこいいクルマ好きもちゃんといる(いた)んだと言う共感を得る事ができます。
免許すらもっていなかった初読の時には、この本に書かれ戦車にも似た大人のゴーカートと評されたギャランVR4に、大人になったら絶対に乗りたいと思ったものだ。懷かしい。そして古いジャガーのオープンを駆るフランソワーズ・サガンの姿と事故の写真の、言葉にならないほどのかっこよさはどうだ。
イカス不良の大人にこそ、クルマは似合うのだ。ミニバンやファミリーカーなんかに乗る奴とは、死ぬまで価値観を共有する事は無い。