「くたばれハリウッド」

パラマウント映画に今も在籍している伝説のプロデューサー。ロバート・エヴァンズの自伝を原作にしたドキュメンタリー映画。原作の自伝はこの数年のお気に入りの一冊だったので、楽しみにしていたが、今一つだった。
物語や彼の語りなら自伝の方が。深い話や細かいエピソードに溢れている分だけ、面白さは数倍増しだ。せいぜいエヴァンズの当時の写真や周囲の連中のスチールやフィルムが沢山見られたのが良かったくらいだった。
彼の半生と、彼の行動や言動は最高にエキサイティングだ。そりゃ伝説にもなる。
女優にナンパされ役者としてスカウトされ、期待される新人としてハリウッドに鳴り物入りで入っていくがヘミングウエーに拒否されるがザナックに助けられ、それでも続いて失敗作に出てしまったがために、役者としての人生は断たれ、しかし広い友人関係に助けられ期待されないプロデューサとして底辺に落ちていた映画会社に迎えられ「ある愛の歌」や「ゴッドファーザー」や「ゲッタウェイ」や「ローズマリーの赤ちゃん」や「チャイナタウン」などのヒット作を連発し会社を救ったは良いけれど、麻薬の取引で逮捕され、殺人事件の関係者として法廷に引きずり出されハリウッドを干されていたはずが、また最近では作品をプロデュースしている。と説明下手な俺が簡単にまとめただけでも凄くない?70年代から90年代を駆け抜けたプロデューサって感じでしょ。
結局ハリウッドが娯楽産業としてのし上がって来た背景、単純にマスプロダクトだけとは割り切れないサムシングがある理由は、こういう凄い奴がいるって事なんだな。報酬と待遇だけが大切な会社員プロデューサだけじゃない、底力なんだよな。
こういうプロデューサがいないのが、日本映画の悲劇だ。良くも悪くも個性的だった奥山和由や、一時の仙頭なんかは期待が大きかったけれど、最後までまっとうできなかった。プロデューサと言うある種の無駄を必要としない制作システムってのは夢が無いし、希望も無い。青山みたいな監督がのさばる理由もよく分かるよ。
で、映画の話に戻ると、この映画は本を読んでいない人にはお奨めするけれど、ぜひ原作本を古本屋で探して読んで欲しい。
黄金のハリウッドって何かが少し分かるし、物を作る現場でのプロデューサって役割がよく分かる。ものを作るって事はクレイジーだけど、麻薬以上に魅力的なんだ。