「パンチドランク・ラブ」

マグノリア」以来のポール・アンドーソン。群像劇かと思っていたらまるで違った。先入観を軽くいなしてくれるこういう裏切られは心地良い。
冒頭のシーンから、まちがなく映画だ。良い映画って奴は、冒頭のシーンからすでに空気が出来上がっている。例えば「レオン」のファーストシーン。あのシーンだけで監督が映画ってものは何かを感覚として持っている事が良く分かる。
でこの映画。ファーストシーンからの展開は、最高だ。その後展開されていく世界や空気も、妙に居心地が悪く、違和感が続く。それがまたこの映画の味になって心地良い。主人公のアダム・サンドラーの抑えた演技と、がちゃがちゃと落ち着かず座りの悪い空気が、他のものには無い魅力になっている。
そして気が付けば、恋する男の物語にすっかりはまっている自分に気が付く。
ハワイのシェラトンのロビー、二人のキスシーンの演出は秀逸だ。一歩間違えば可愛いとなってしまう状況を、キュートだけれどこの映画の空気にマッチしたものにしている。その上、二人のクラクラとくる一目惚れの恋(=パンチドランク・ラブ)を上手く醸し出している。
前2作とは違ってストレートでシンプルな話だけれども、駄目人間賛歌で、性根は優しい変わり者監督のすばらしさが溢れている作品だ。
大好きなあの娘と一緒に見たい映画。娘が出来て高校生にでもなったら一緒に見るってのも良いかも。