『藁の盾』

この設定はいかしている。日本中から命を狙われる極悪犯を守るSPの男の物語だ。
粗筋だけで久しぶりに痺れた。あっと言う間に読了してしまう力強いミステリーだ。謎解きなんて無い、スピードと力の心地良い小説だ。
出だしの主人公の生活には、共感以上のシンパシーを感じた。ボディーシャンプーとシャンプーのくだりには思わず涙が出た。そうなんだ帰られない物、守り続けたいものが男にはあるんだ。内藤陳ばりにこのシーンを読まずに死ねるかだ。
残念な事に後半物語の大きさや、スピードが薄くなり、勢いもそがれる印象がある。特に一行事に段落が変わる文章の薄さは、辛い。だからこそ勢いがある文章だと言えるかもしれないが、これはすかすかの文章な印象は否めない。薄すぎる。痺れる話だけに、もっと書き込んで欲しかった。このスピードを殺さず書き込む方法はあったはずだ。
作者の描くマンガのコマ割や背景にも似た薄さが残念でならない。それが持ち味と言う事も可能かも知れないが、俺はもっともっと書き込まれてこの世界をキープする事を求めたい。
ビーバップなんて止めて良いから、本腰いれて文字を積み重ねて欲しい。
次作に大期待の作品だ。