新選組!

溜まりに溜まったビデオを観た。
大政奉還から龍馬暗殺、薩摩の台頭までの幕末のどまん中の熱い季節の物語だ。
改めて三谷幸喜を褒めちぎりたい。安易に流れれば有名な幕末ヒーローを真ん中に置いて、ダイナミックな作劇も可能な所を、良い悪いの判断をつけないまま新選組と言う集団の中の、男逹のそれぞれのドラマを描ききっている。それぞれの想いと時代の流れを誰かに委託した単純な善悪でも無く、後生の価値観でも無く、ましてやいやらしいサラリーマン的な価値でもない、ニュートラルな視点で生きる男逹の想いをそれぞれ大切にしながら話を進めている。歴史的な評価なんて気にしない男らしさは、男三谷の格好良さだ。登場する連中と同じ熱さを感じる。

また以前散々不満を感じていたNHKスタッフ陣の演出の酷さも、山南の切腹の回、明里が窓越しに菜の花を渡すシーンからラストまで完璧なまでに完成されている。職人技の斬れた演出ではなく粗野でも登場人物逹の気持ちを伝えるすばらしい演出だ。
明里が山南のいる部屋の窓の傍を離れ、こぼれる涙を堪えるために微かに頭をあげたまま無言であえて軽い足取りで去るシーン、最後の最後のカット近藤と土方の男二人の号泣のシーン、大河の歴史に残る良いシーンだ。演出の伊勢田が見せる、和田勉を代表とするNHk伝統のテレビドラマの王道的カメラワーク、バストショットと顔のクローズアップを中心とした演出は、すばらしい。ここに来てやっと脚本家の想いと演出の力が合致した回が増えてきた。
自称褒められて伸びるタイプの三谷幸喜をみんな褒めて褒めて褒めまくろう。新しい幕末ドラマの誕生に立ち会える悦びを与えてくれた事に対して。