「ミスティックリバー」

ショーン・ペンケビン・ベーコンティム・ロビンスの三人の役者は完璧だ。そして監督のクリント・イーストウッドの演出も冷静でどこまでもクルーで完全だ。
原作にあった岬、通りを一つ挟んだ先の貧富の差(といっても同じ底辺の世界の中での差でしかない)が薄くなり、ティムの演じるデイブの哀しみや犠牲者の彼氏の家庭の不幸が弱くなってしまっているが、それ以上の過不足なく登場する人々の罪や哀しみやどうしようも無さを描ききっている。
主人公の誰かに感情を移入して演出をするのは簡単だ。より涙を求める観客には受けるだろう。があえてその方法を選ばず、突き放した冷たさでカメラを回した監督の姿勢は素晴らしい。
涙を誘う物語を描きたいわけでではないだろう。人々が抱える罪を感情に流される事無く描き、人の生きる哀しさを描く。静かな画からそれは伝わってくる。
小説も良い。映画も良い。最近では珍しい事だ。
ラスト近くの川縁の二人。そこに流れる空気は映画独自のものだし、小説にはまた違った質感が描かれている。
この世界の成立に力を尽くした3+1の役者の才能は疑うべくもなく(誰も疑ってないか)最高級のものだ。