『壬生義士伝』浅田次郎

浅田次郎の噺は、あざといくらいに上手い。巧みな筆運びと構成、言葉で、じんと心根に響く物語に、知らず涙が流れてしまう。
昨年の大河で知った新選組と幕末の世界に、また違った光を投げかけてくれた。実在だけれど、詳細の知られていない南部陸奥足軽出身で新選組に加わった吉村貫一郎と、その周辺の人々を、大政奉還から五稜郭の闘いまでの期間で描ききった。
親子二代にわたる同郷の士の心の繋がり、武士としての義と心意気とそれを知り尽くした上での友情、親子の愛、師弟の愛、もう泣くしか無い噺だ。
主人公以外の周囲の人々、特に斎藤一の男気には震える。
読め!友人の思いに、同士の思いに、親子の情と孝に、泣け!