『神様からのひと言』 荻原浩

荻原浩の文体とは相性が悪いようだ。『おろろ畑で捕まえて』や『ハードボイルド・エッグ』やこの作品もテーマはすごく共感できる。過疎の村を広告会社がプロデュースする、今を生きるハードボイルドってどんなの?、サラリーマンの矜持を軽い言葉で描く、どれも俺が書きたいものばかりだ。
でもどの本読んでも、すかすかなんだよな。届く事がほとんど無いんだ。一般的にかどうかは知らない。
俺の感想だ。今一つもふたつも足りない。どこかで見た事あるシーンで、読んだ事あるような描写で気分しかしない。響くものもない。この作品だって、ろんな「神様」からのひと言で主人公が成長していく様子は、扱いさえ上手なら俺の涙腺を直撃するはずだし、登場人物の設定だって間違いなく俺好みなのに、書き割りな印象しか残らないんだよな。
俺の感じるこの書き割り臭さが、きっと作者の軽さであり飄々としたユーモアなんだろうけど、俺にはダメだ。全体に運びや小道具や、小芝居が臭いし、あざとい。
でも、普通にがんばるサラリーマンを元気づけてくれる。んじゃないの?きっと。