『海の底』

前作『空の中』に比べて、こちらの方が好きだ。海底から巨大水棲生物が多数出没し、対戦する機動隊、自衛隊の話。メインはきりしお級潜水艦に閉じ込められた水自の幹部候補生二人と小学生〜中学生までの子供たちの話。
前作とあわせこの二作は平成ガメラシリーズと対応していて、前作が空の怪獣、今回が群生する怪獣と人間の対決と言う構図だ。もちろん正義の味方の怪獣は出てこない。そこが肝だ。
不明な生物と警察、機動隊との対決。組織の中で不明な緊急事態に対応する大人の男たちの行動に涙する。サブで進む物語を俺は楽しんだ。都合の良い部分やステレオタイプな部分も多々ある。でもしっかりと大人の目に耐えうるドラマがちゃんとある。警備の担当者、管理官の誇りと行動と飄々とした真摯な矜持に俺は三度泣いた。メインのストーリーもけっして手抜きではないし、子供のいやらしさや大人の姿勢、主人公と女の子との交流も素敵なお話だ。オリジナリティは低いかもしれないが、良い。だけれど俺は、やっぱりこの小説は大人の男の物語だと思う。
作者は女性だと言う。それでも、ここまで男を泣かせる話を書けるんだな。
日々闘っている、日々孤軍奮闘している働く男たちにお奨めだ。