「シン・シティ」

フランク・ミラーのコミックは未読だが、決まった構図と色彩の世界は、スタイリッシュで鋭い。モノクロとパートカラーで構成された世界は、逆に饒舌なくらいにカラフルに迫ってくる。
身震いするほどの衝撃を受ける事はなかったけれど、力のある映画だった。
女への愛を貫く3人の男の物語だ。「その街では愛までも闘い」そのものだ。
閉塞感に溢れるモノクロの街で、一瞬の色彩を与えてくれる女逹を守る、愛するために命を賭して闘う男の物語。物語そのものはシンプルで普通だ。手垢がついたと言って良い程ありきたりだが、閉じきって腐りきった世界の中で、過剰に愚直に想いを貫こうとする男逹の姿は、感動的ですらある。
敵役の上院議員やその息子、大司教などは、今の象徴だ。汚泥が溜まりきった世界で要領良く権力と金を手に入れた者逹は、形式だけ守ればどんな事もできる。勝ち組の彼等の腐敗や、力を倒すのは愚直でストレートな男だけだって事だろう。ただ、ここはあまりにも無邪気にすぎる。死んでいくしかない男にシンパシーを感じ、結果よりも行為、その行為へ至る心情こそが評価され感動を与える事ができる、と言うようなシンプルなものであれば、結局は現状の権力者や腐敗した力を持つ者だけが、現実には力をキープする事になるじゃないか。俺は今、そうしたロマンティックな矜持だけではダメだと思う。妥協せずに、スタイルと想いを貫きながら、敵のロジックに染まらず、敵を完膚無きまで倒す。愚直になるのはこの過程全てに対してだけだ、ロマンだけでは何も変わらない。そこにあるのは自己満足だけだ。それが格好良いとも言えるが、今は格好良い男は最期まで格好良くなけりゃいけない、そう思う。そう行動したい。
映画から話が逸れた。ジェシカ・アルバは素敵だ!!セクシーだ!!能面な演技なデボン・青木も良い。ゴールディもゴージャスだ。ただ、セクシー、艶やかな性的な匂いが足りない。男が命を賭ける女は、もっとセクシーじゃないといけないぜ。パート2ではもっともっとセクシーな空気を描いて欲しいものです。
二時間の超える本編もあっと言う間に過ぎていく。観ている間は、ずっと興奮状態の良い映画だ。ただ、どう見てもギャグだぞって所にも日本人は真剣に笑わず観ているってのには、どうにも参った。上院議員の息子の最期のシーンは、笑う所だろ。間違いなくやつらは笑わせるつもりで作ってる。映画館で独り笑った俺が浮いていたのは、いかがなもんだろうな?