『血液魚雷』

傑作『今池電波聖ゴミマリア』の作者の最新作。初読の『今池〜』がかなりの怪作だっただけに、意表を突かれた。ストレートなSFだ。「ミクロの決死圈」にインスパイアされた体内探検のストーリーだ。現代に上手にあの状況を持ち込むかと思ったら、こう来たか。面白かった。グレイトなSFに対して、正面から勝負を挑みけっして負けていない。オリジナルの「ミクロ〜」は手塚の短編にインスパイアされて作られたってのは有名な話だけれど、こうやって時代を変えて新しい物になっていくのは興味深いな。映画は美術にダリを迎えてシュールの斬新と商業映画の美術のギリギリの線で刺激的なビジュアルだったし、当時最新のSFXを使った大作だった。子供だからこそ、やたらとドキドキして観たのを覚えている。今ではああした、ついに来たかって映画が少なくなった。正確に言えば、少なくなったのではなくて、多すぎて、期待を高めたり、大切に大切に映画に接する機会が激減したって所だけれど。あの頃の宝石のように大切だった映画や小説に接した気持ちを再度持つ事はできるんだろうか?
小説は、かなりストレートなお話で、華やかなギミックも少ない。が王道なだけにしっかりとした筋とはっきりとした世界が展開して心地良い。SFって楽しいぞ。