『みんな行ってしまう』

彼の作品にはいつもくらい陰がある。『みんな行ってしまう』の表題作は、言葉少なく静かに哀しい一瞬を描き出して、しみじみと響いてくる。どの作品も同じように染みるような哀しさだ。
再読の『オンリー・フォーワード』も今読み返すと、そこに込められている哀しみは深い。夢読みを主人公にしたSFハードボイルドの表の顔と、その裏にあるはみ出してしまった者の喪失と哀しみの物語は、どこまでも悲しい。そして明日へ進むための力になってくれる。