「世界の中心で、愛をさけぶ」

ドラマの綾瀬はるかに恋した俺には、残念ながら物足りなかった。映画としての完成度は高い。長澤まさみ森山未來の演技、柴咲コウ山崎努の存在感が全てだ。つまりこの映画の核になる現在の主要な部分に力が無いって事だ。
この映画は、現在に生きる男の再生の物語で、乗り越えるべき過去に少年時代がある。回想に力やノスタルジーがあるからこそ、そこから繋がる今の物語が強くなければいけないのに、そこが一番弱いんじゃ意味がない。映画の中での矛盾や、なんじゃそりゃの問題は、映画で完結していればそれで良いのだけれど、それが気になってしょうがいんじゃ、残念ながらどうしようもない。少年時代の素敵さが、今に繋がっていないし、透明な哀しさが淡々としているだけに、慟哭するほどの感情の共鳴は生まれない。
救いは長澤と森山だ。この二人は、映画に愛された役者だ。観ているだけで、スクリーンに引き込まれる。これがあるだけで、観る価値がある。
まあ、今更だけどね。
有名な「助けてください」が、神への祈りだって気付いた時には、ちょっと泣けた。