『すぐそこの彼岸』

白石の文章は、俺には辛い。生々しいほどに突き刺さるシュチエーションに、直接俺の心を傷つけるようなストレートな愚かな姿。彼が書く男の厭らしさが、そのまま俺自身の鏡だ。
首相候補の政治家を父に持ち、その秘書として働く男の、哀しい物語だ。妻とは別に女性とつき合い。金を使い。借金の清算のために嘘をつき人を傷つけ、自らの命を絶とうとする。どこまでも辛い男だろう。でも男は誰にしても、これににた弱く柔で、痛々しいほどの想いを持つ者だ。哀しいまでにも愚かな男の姿を見続けるしか、俺にはできなかった。主人公の彼に訪れる最期の希望も、俺には希望にならず、辛い気持ちだけが残る。それでも本を投げ捨てる事ができない。この弱さと醜さこそが自分自身に繋がるものだからだ。強くタフな男でなく、生身でピンクでざらざらした柔らかい肌を持つ男こそが読むべき本だと思う。