『QED 鬼の城伝説』 高田 崇史

長く続いてるシリーズだ。京極フォロワーの一つとして登場した二番煎じ企画だと思って読み始めたシリーズも、順調に続いている。何冊目かは知らない。
岡山を舞台に桃太郎伝説を紐解きながら、同時に解決されていく密室殺人。新本格にありがちな、トリックと蘊蓄がらみの因果を説き解く事にだけ主眼がおかれた作品で、登場人物やストーリーは添え物の扱いだ。彼の小説に人間やドラマを求める読者もいなだろうから、大きなお世話だろう。
桃太郎伝説を解きほぐし、真相を解明するパートは、面白かった。作品毎に新しい伝説、伝記や歴史を新解釈で解明していくのが、作者のシリーズの魅力で、その魅力はこの作品でも充分に発揮されている。鬼、鬼の城、備中、備前の伝説を読み解く民俗学的解釈は、決して目新しい物ではないけれど、語り部の探偵役が進める説明は、美しいロジックではないけれど、作品内では説得力を持つ。例え付与曲折、多少強引でも、フィクションの中で説得力を持てば、それはそれで良いんだと思う。
学生時代、桃太郎の話を軍国主義のキーワードで解いた講義を受けた事がある。あれは、あれで納得できた。物語をどういう構造で読み解くか、その読み解きがスリリングであったり、説得力を持つ状況であれば、読者である俺には幸福だ。
時には新本格系(もうこんな言い方しないのかな?)を読むのも良いもんだ。本当は、この面白さに登場人物とドラマの面白さがあれば、完璧なんだけれど、それは高望みだよな。謎、トリック、ドラマがそろっていた島田の『白馬の騎士』は、多少あざとかったけれど、俺にはとっては新本格推理小説の奇跡だったんだなと改めて思う。