『陰日向に咲く』 劇団ひとり

けっして美文ってわけじゃない。けれどこの作品の文章は、良いと思う。
劇団ひとりの処女作。抜けていて、おバカで、卑屈で、落ちこぼれと言われるような小市民的なダメな人物逹の物語。俺にとって日常の延長として、自分のことのように感情移入しやすいキャラクターではないけれど、ここに登場する連中は、誰も憎めない。彼等の行動を愛おしく感じる。斎藤美奈子直木賞レベルと言うほどのものでもないし、そのほめ方は失礼だと思う程、独自のリアルな人物の物語になっている。人間観察をベースにした芸をしたいと、太田プロでがんばってきた劇団ひとりだけのことはある。
俺は、「拝啓、僕のアイドル様」と「Over Run」の男逹が好きだな。
映画会社7者からオファーがきているようだけれど、できれば本人に監督してもらいたい。安易な類型化でこのキャラを映像化して欲しくはないな。