『炎と氷』新堂冬樹

著者お得意の金貸しの話。直情の過剰な暴力と冷酷な知の暴力と言う対照的な性格を持つ、中学時代の同級生が、お互いの存在をかけて対立するコンゲーム闇金コンゲームだけに、壮絶なだましあいになるのだけれど、どこか喰い足りなかった。もっとどろどろと、ドクドクと、ぎりぎりまで切り込んで反吐がでるような世界を見せて欲しかった。『溝鼠』で、振り切った世界まで行ってしまったので、その延長を期待していたけれど、残念だ。まあ発表順で言うと、ずいぶん前の作品なので、しょうがないのだけれど。Vシネにもなっているようで、竹内力宇梶剛士が主演しているらしい。ピッタリじゃないか。チープさ加減も含めて、そのVシネのために書かれた、もしくはノベライズって説明されると納得できる一冊。
新刊のキャバクラと風俗の裏を描いた『黒い太陽』に期待しよう。