『陽気なギャングの日常と襲撃』 伊坂幸太郎

大傑作『陽気なギャングが地球をまわす』の続編。期待しない方がどうかしている。
映画化のおかげかどうかは知らないが、良くぞ出版してくれた。どれだけ待ったことか!
一読、体中が伊坂ワールド(この作品の場合は、ギャング連中ワールドか?)に満たされ、朝からハッピーな気分満タンだ。
内容はタイトル通りのギャング達の日常とチームでのギャング活動、しかもカジノ襲撃まで着いてくる豪華なものだ。
もともとが伊坂の作品では『地球をまわす〜』がベストだと思っていた俺には、申し分ない、楽しい内容だった。なによりも、タランティーノのギャングから残酷さや暗さや下品で貧相な部分と暴力を引いて、知的で飄々としたユーモアを倍加させた四人のギャングにまた会えただけで、素直に嬉しい。
ストーリーも伊坂らしい、四編の短編とメインストーリーが絡み合って、きっちりとパズルのように収まっていく。なんとなく展開が読めるなんていう野暮は、言いっこなしだ。単に伊坂ワールドに慣れて過剰な構成を自分勝手に求めすぎだ。
今回は回収しきれていないシュチエーションもあるけれど、それはご愛嬌だ。
そして、なによりも今回の作品で嬉しいのが、響野が大活躍することだ。俺は成瀬のようにありたいと思いながら、日々響野を地で行く生活を送っていることは、知る人ぞ知る事実なわけだけれども。全身で響野に親近感を感じまくる。そんな響野が始終弁舌も爽やかに軽妙な口動と行動をしてくれれば、文句は一つもない。雪子さんもあいかわらず素敵だし、他に何が必要か?
なにはさておき、千円札を握り締めて書店へ走ってくれ!
今回は本当にギャングが地球をまわしているし、読書中ずっとハッピーで飄々とした気分になっていられるから。
映画はまだみていないけど、予告編など見る限り、ちょっとはしゃぎすぎじゃないか?邦画にありがちな、軽妙なセンスを履き違えてしまっているんじゃないのかな。心配だ。響野髪は間違っても金髪じゃないし、無精髭なんてはやさないぞ。でも佐藤浩市なのは嬉しいけど。