「海猿 Limit of Love」

映画、テレビドラマと続いてきたシリーズのファイナル、パニックムービーとしての評価が思いのほか高いので、気になっていた。
取り残された乗客、刻々と迫るリミット、不可能な状況と克服、連帯と友情、プロとしての仕事、ともに過ごしてきた男達の信頼と絶望と希望。きっちりと王道で構成された噂に違わない、パニックムービーとしての質は高かった。満足。主人公たちのラブストーリーや他の話はまあこんなもんだろう。そこはテレビサイズの分かり易さだ。この映画の見せ場は、フェリー沈没の質感だ。あの船の画はどうやって作ったんだろう。沈没の瞬間の映像は、実は無い。前後の映像と状況で沈没を納得させられる。このあたりうまいけれど、残念だ。あの引きの画と同じ質感で、船が沈む瞬間を見たかった。
後はほんとストーリーだ。ラストシーンなんてもっとリアルで素敵な進め方があるだろうに…。それでも女性の観客は加藤愛の叫びにグズグズと鼻をならしていたから、あの程度の方が、今の普通の観客には理解できてよいのかもしれないけれど。なんせ映画館に泣きに来てるぐらいだから。と言う俺も最後の指令室で職員達が書類を紙吹雪のように舞わせながら喜んでいる背景には泣いた。必死に働いた男達の素直な喜びの姿には弱いんだ。
邦画も海保全面協力のもとスケールの大きな画作りが出来るって事が見られるだけでも、一見の価値ありだと思う。ついでに映画近辺の人々のストーリーに対する限界も良く分かる。まあこれはテレビ屋がメインだからってのはあるだろうし、製作委員会の弊害かも知れないけれど。
次は「ポセイドン」だ。人間ドラマが濃厚でかつ脱出ムービーとしての質も高かったあの「ポセイドンアドベンチャー」をどうリメイクし、今になげかけるのか?パニックムービーとして、どこまでハリウッドの力を見せてくれるのか?楽しみだ。