『ダビィンチ・コード』 ダン・ブラウン

世紀の大ベストセラー、しかも超大作映画化!と言うわけで、映画を観る前に読了。
すらすら読める。これは部数も伸びるはずだし、皆読んでるわけだわ。
小説として、テーマや素材は刺激的だけど、小説としては凡作だ。物語を進めるためだけのキャラクターが、役割どおりに進めて行くだけ。白子のシラスや司教のキャラはもっと書き込めて、小説としての深みを与える事ができるはずだ。まあ本の主題は、聖杯の謎を巡る謎解きミステリーで、文学なわけではないので、その意味ではこれで良いのだろう。実際次々と繰り広げられて行く謎と謎解きの連鎖は、目が離せない。今時のストーリーで、まさにハリウッドの大好物。テーマにかかわらず映画化も納得できる。エンターテインとしての読書にはお薦めだ。琴線に触れるものは何もないけど。
でテーマだ。これは正直日本人や非キリスト教の人々にはどうでも良いだろ。カソリックに帰依していて、宗教とともに日常がある文化でないと、衝撃は少ない。だから全米でベストセラーなのは逆に納得だ。日本では、本来好奇心の対象としてこうした宗教、絵画、古代からの陰謀などが好きな人達が、喜んだり興味持ったりする内容だ。自分の生活とは地続きじゃない、謎のロマンのような。で、ここに記されている仮説も、その辺り興味ある人には、それほど目新しいものじゃない。例え最新の学説に基づいたとしても。
結論すれば、大方の日本人にはどうでも良いテーマを、上手に扱った良くできたなぞ解きミステリーてとこかな。展開はそれなりに面白いので、さらりと読める知的風読書がしたい時にはまあお薦め。