『腑抜けども悲しみの愛を見せろ』 本谷希子

日本エンジェル大賞で、受賞した企画の原作。舞台の小説化でもあるらしい。虚言癖のある精神を病んだ長女と、兄、妹、兄の嫁の物語。地方都市の郊外と言う、情報から取り残されて閉塞感しかない場所で、行き場の無い愛憎が煮詰まっていく。家族の間に溜まっていく感情の澱が、エキソントリックな姉により増加され、必然的に崩壊して行く。その過程は緊張感があり、読みごたえがあった。が、だからどうしたなのだ。共感や感情移入する場所が無い。舞台であれば、緊張感と登場人物の存在感で見応えのあるものになっていただろう。たぶん映画は見ない。