「ディパーティッド」

「インファーナルアフェア」のハリウッドリメイク。デカプリオ、マッドディモンの豪華俳優に加えて、スコセッシ渾身の演出だ。アカデミー受賞も妥当だろ。
オリジナルの中にあった俺が愛する無情の哀しさが、残念ながらこの作品の中には感じられなかった。アンディ・ラウが背負う意志と罪と寂寥のない交ぜになった無常と全ての死を背負う苦しみに俺は深く感動した。その点で比較すれば、「ディパーティッド」は完敗だ。
しかし、スコセッシが描く世界は、オリジナルとは異なっている。アイリッシュの移民逹がギャングとして生きてしくしかなかった中で成り上がったエキセントリックなボス=ジャック・ニコルソンの世界が、この映画の魅力だ。
オリジナルのサムも面白いボスだった。が、ニコルソンの魅力は独特だ。主役の二人の苦悩は薄味で魅力に欠ける。そこを補って余りある存在感を示すニコルソンの狂気を楽しむ。スタイリッシュでも、大物でもない、街のボスに毛の生えた程度の組織の長でしかないマフィアの暴力とダサさをあますとこなく演じきった彼こそが、この映画の主役だ。
主役が異なれば映画の魅力も、意味も異なる。だから俺の中では、「インターナルアフェア」も「ディパーティッド」もどちらも素敵な映画だ。