『 家なき鳥、星をこえる プラネテス』 常盤陽

漫画『プラネテス』の公式外伝。本巻に登場するテロ組織のリーダー、ハキムを主人公にした物語。俺は『プラネテス』の熱心な読者じゃないので、ハキムの事は良く覚えていなかった。そのぶんこの小説は面白く読めた。しっかりとしたリサーチと情報に基づいた中東の架空の国を舞台にした前半の2/3はずっしりとこちらに届いてくる。仲間を持てず、人を信じることができないセンシティブな少年には、多くのもと少年が共感を抱く事はできるだろう。ここは自分の場所ではないと言う思いに捕われない少年は少ないだろう。そうした少年の一人であるハキムが、どこからか道を誤り、人以上に純真だったがために所属のための妥協を許せず、はじき出されてしまう。その姿に涙する。
漫画との整合を合わせるために、後半足速に物語が進んでしまう箇所があるのが難点だけれど、最後まで読ませる内容は、新人としては評価できる。この先どんな物語を語っていけるかは、不明だが『プラネテス』を読んでいなくても、センシティブな少年の成長物語、誤った道を歩んでしまった悲劇としてあまり重くなく、小説とラノベの中間的な小説としてお薦め。