「狂気の海」

自主映画だからね。ローバジェットだからね。本当はそうした言い訳は許されないと思う。
この状況の中では、かなりの問題作だと思う。
製作への志と、描かずにはいられない高橋氏の思いは良くわかる。憲法9条のスーパーは、どうしたって必要だったろう。左右関係なく、この9条への思いや、現状への思いは誰にでもあるだろう。富士王朝と、9条を巡る物語をエンターテイメントとして形にした事は高く評価されて良い。でも、この製作スタイルは、どうしても受け入れがたい。ハリウッド並みに予算をかき集めろとは言わないし、無理なのも分かっている。でも。手作り感覚で作成したために、ただようチープ感は、観客に媚てはないか?分かってくれる観客は、わかってくれるだろうが、それで満足していないか?
テレビ局と芸能事務所、下流のスポンサーからしか金が集まらず、低能な観客の緩い涙腺を刺激する安い映画しか製作できない現状は分かった上で、だからこそ理解ある観客に甘えない製作をして欲しかった。
一見破天荒で無茶苦茶に見えるストーリーも、考え抜かれた上での物なのだから、安く見せない方向での製作をして欲しかった。「帝都大戦」に捧ぐのであれば、あの作品にあった志と闘いと、金主を騙す強さを持って製作してくれていたら、今の倍以上の傑作になっていたことだろう。