『マネーロード』 二郎遊真

第39回メフィスト賞受賞作。金を愛し、金に愛された男の放浪と再生の物語。金と言う生々しい欲望の対象を、不思議な体温で記した作品。傑作とまでは行かないが、一読の価値はあり。欲望の肯定や否定と言う視点ではなく、金が作り上げる人の悲喜劇を、アタマの上あたりの視点から覚めて描いたような印象だ。主人公の乾き具合も、そうした視点のせいだろうな。最後に再生しなきゃ、その不思議な温度のままで終われたのに、まとめようとした点が、ちょっと残念。物語に無理に分かりやすい意味を持たせて終わらせなくても、十分にこの空気と温度だけで作品として成立していたのに。