『生きる技術は名作に学べ』 伊藤聡 ★

中学生の読書感想文集のような本だった。たしかに生きる技術は本から学ぶべきだ。読書はかならずし物語を楽しむだけのものでもない。しかし、良き事や生きる指針を学ぶだけが読書の快楽じゃない。現実には触れることができない、実社会では功名または常識で隠されている人としての内なる邪悪なるものや、醜悪なものを楽しむことも読書の快楽だし、憎悪の時間、嫌悪の時間をあえて手に入れるのも読書の楽しみだ。人生を良きものとするためのテキストとしての読書は、どちらかと言うと退屈で、教条的な本との接し方だと思う。良いんだよ。そうやって優等生として本を読んで。でもそれはすでに学校と言う退屈で平均的な価値を尺度とする世界でなんども教わってきたじゃないか。『老人と海』から枯れていく男が男性性を放棄する事を学ぶよりも、老いてなお海での闘いを選び続けること、結果でなく闘いを続けざるを得ない不滅で放棄などできない矜持としての男性性のカッコ良さを学ぶ方が俺は好きだな。ていうこれも中二的な感想文みたいだけどね。