『犬の力 上・下』 ドン・ウィンズロウ ★★★★★

2010年最初の1冊で、今年のベスト1が決まった気がしたほどの傑作。邪なる犬の力を持って正義をなす主人公、墜ちていく自分を意識し罪を感じながらも、最後の一線で自身の中の倫理を信じて行動する。しかしその倫理を持った行動も、人を傷つけ薄汚れた世界を広げてしまうことも自覚している。どうだろうこのどうしようもなく現実を突きつけてくる設定は。その上で、それでも考えぬいた自分の信じる事を貫き通す、薄汚れた気高き魂は。読書中、心に響く主人公の魂への共感を、ぜひ楽しんで欲しい。