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「最強のふたり」 ★★★★☆

鑑賞中も、映画館を出た後もずっと気持ちの良い映画。
全身麻痺の富豪と黒人の介護人との深まっていく交流が、明るいユーモアで描かれ、コメディでは無いのに最初から最後まで笑わされぱなっしになる。おかしいから気持ち良いだけでなく、二人と周囲の陰も含めた健全さ、貧困の陰、人間不信の陰などもしっかりと受け止めた上でユーモアと強さが、観客を気持ち良くさせてくれる。
人の悪意を直接的に描写しないことに不満がないわけではないが、凄くソフィスケートされた形、主役の役者の絶妙な演技の功績が大きい、で主人公の陰陽複雑な心情を現している部分に、邦画はもちろんハリウッドなんかには絶対表現できない、繊細な魅力もあわせ持っている。不躾な貧者を不快に思い、思い付きの侮辱的なからかいで試してやろうと言う、高圧的な慢心とそのベースにある日常への諦め。主人公を楽しませるために心底楽しそうに踊る介護人と彼に影響されて遠慮がちながらも楽しみ始める使用人たちの様子と笑顔を、心遣いを理解し喜びながらも自分自身は絶対に参加できないと改めて突き付けられた悲しみと残酷な現実、その上彼らへの微かな怨みまでが滲んでしまう笑顔。こうした感情を、全身を使えない状態で演じきる主演の役者と、感傷的に描くことをしない監督の演出の細やかさに、最大級の称賛を贈りたい。
もちろん真正面で描かれる二人の交流と友情も、照れることなく健全にストレートに描かれ、それも暖かく心に同じ健全さをもって広がっていく。
健全すぎる印象が強いきらいは有るけれど、その内にしっかりと複雑な人の心情を織り込んだ、傑作。