「ヴァルハラ・ライジング」★★★★

北欧神話をベースにし、ヴァイキングの世界を背景にしたスタイリッシュで凶暴な暴力と戦士の再生の物語。
ほとんど台詞のない冒頭10分あまりのシーンで完全に俺のハートは鷲掴みされ、観念的な世界観が展開する終盤まで一挙に映画の世界に魅せられた。
全身にペインティングをされた奴隷同士の殺し合いの、どこまでも凶暴で痛みに溢れたバイオレンス。説明する台詞は一切なく、乾いた質感と完璧な構図で見せる映像。これぞ映画。観ている間の興奮は他に代え難い。奴隷としての生活を強いた族長を殺し内蔵を引きづり出す画の、震えるほどの力強さ。
北欧神話を良く知らないので、終盤のストーリーの意味は理解できていないが、隻眼の戦士オーディンの宮殿ヴァルハラ、そこはキリスト教徒のヴァイキング達が流れ着いた地獄と、その地獄で我が身を犠牲として次代の種に意思を継ぐ獣性に溢れた寡黙な戦士が漂流し再生する神話の物語は、これ以上無いほど削ぎ落とされたスタイリッシュな映像と、過剰な凶暴性で彩られ、言葉で語り尽くせない暴力的な快楽が映画から溢れ出てくる。
「DRIVE」以上に過剰で凶暴な暴力と、寡黙なスタイルは監督の真骨頂だ。ただスゲーと心の中で言い続けることしかできなかった。
ストーリの意味は要らない。映像の力に犯され続ける快楽。これこそ映画だ。