「SPY/スパイ」 おばさん、世界を股にかける。

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有能なスパイのオペレータとしてCIAで内勤していたおばちゃんが、パートナーの復讐のために現場に出て活躍するスパイコメディ。

 

劇場で見逃したの失敗した!!と鑑賞中思ってたら、DVDスルー扱いだった。

何やってんだ、日本の配給会社は?!

(日本ではほぼ)無名なおばさんが主役の映画はヒットしないと、思い込んでるんだろうな。映画の目利きができない昨今の映画会社らしい間抜けさだ。

誰が主役だろうが、映画としての質が高ければ、どんな地味な話でも、誰が主役でも、しっかりと公開館さえ確保すれば、今なら作品なりの規模でヒットするって事が映画会社の人間にだけは、理解できてない。まあ、それはさておき、DVDスルーで、普通の人たちに存在が知られていないのが残念な良くできたコメディ映画だ。

 

アバンタイトルジュード・ロウのいかにも007風の登場から始まって、自然にオペレータの役割やこの映画のスパイの世界観を観客にスムーズに理解させる展開にまずは関心した。

そのまま往年の007テイストのオープニングで、この監督や製作陣は”わかっている”のが伝わってきた。この感覚は間違っていなくて、最後までスパイコメディとしてワクワク、ニヤニヤ、ゲラゲラと楽しめた。

 

何よりも主役のスーザンの造形が素晴らしい。40過ぎてデブでモテなくて自己卑下がひどくて下品で短期で性格も決して良くなく身の程知らずのイケメン好きで強い相手には隠し笑で同調するような小心なくせに口が悪い。職場での評価や価値が低くて、割り当てられるカバーは、クリスマスおばさんやピンクおばさんなど典型的なアメリカの普通のおばさんばっかりで冴えない。それなのに銃の腕は最高で格闘技術も高い、何よりも諦めないガッツは誰にも負けない。

こんな複雑で強烈なキャラクターを、観客に憎まれず逆に愛らしいと思わせてしまう設定と演技が、この映画の肝だ。

こんなおばちゃんが、最初から最後まで活躍し、スパイ映画としてのスリルやアクションで手に汗を握らせながら、しっかりと笑わせてくれる。

スーザンが、おばさんパーマにダサい服装ながらパリで大活躍した後で、ローマへの任務のために、保険販売の優秀者のご褒美としてローマに来たおばさんと言うカバー変更の指示を受けたシーン。小道具を開けた中に見えた猫の顔が大きくプリントされたピンクのシャツが見えたカット。その全身ピンクのスーツに猫顔プリントシャツを着てローマに降りてきたカット。この流れのセンスの良さとバカバカしさには爆笑した。

ジェイソン・ステイサムを、最後まで狂言回しにしか使っていないのも贅沢な遊び心だ。俺の趣味としては、最後の最後のカットは不必要だったけど。

 

スパイコメディを観ていてこんなに笑ったのは、「オースティンパワーズ」を観て以来だ。スパイ映画の中にもコメディシーンは彩りで取り入れられるが、この映画は徹頭徹尾コメディ映画でありながらスパイ映画でもあろうとした姿勢がすごい。

深く何かを考えたり、心震えるような何かに触れる映画じゃないけど、これぞ娯楽映画、観客を楽しませるために徹底して制作された映画だ。

こういう楽しい映画を観ていると、それだけで幸せな気持ちなれる。