「風の払暁 満州国演義一 」(新潮文庫) 読書メーター

 

風の払暁 満州国演義一 (新潮文庫)

風の払暁 満州国演義一 (新潮文庫)

 

 

満洲建国前の日本。当時の空気感や恐慌の重い閉塞感などが物語の背後から滲み出ていた。今の常識で、過去の行動を批判したり断罪することは愚かで、作者の目線にはそんな濁りは一切ない。様々な価値観を象徴する四人の兄弟たちが、時代の波に飲み込まれ、弄ばれていく様子を描きながら、満洲の姿や日本の有様を描き出していく。陸軍や政治家だけが非道だったり悪魔だったわけじゃない。日本人が全員愚かだっただけだ。現代が戦前の空気に似ているなんて言葉は思考停止だ。人は進歩なんかしていない、右も左もあの頃から変わらず愚かなだけだ。