「群狼の舞: 満州国演義三 」(新潮文庫) 読書メーター

 

群狼の舞: 満州国演義三 (新潮文庫)

群狼の舞: 満州国演義三 (新潮文庫)

 

 

『国家を創りあげるのは男の最高の浪漫だ』の台詞に全てが表われている一巻。浪漫は人を熱くさせ、狂わせ、理想を語らせ、醜悪な欲望をたぎらせ、本性を顕にする。その瞬間に立ち会えていたら、長男太郎のようにいつの間にか浪漫の虜に間違いなくなっていただろう。成り立ちが謀略に塗れたものだとしても。当時市井の庶民だったとして、未曾有の不景気の中、満州の可能性に胸を熱くせずに、『理性的に』その欺瞞を指摘できたとは思えない。さらりと語られる内地の市民の反応こそが、突きつけられる現実だ。今を呑気に生きる私に批判なんてできない。