「灰塵の暦: 満州国演義五 」(新潮文庫) 読書メーター

 

灰塵の暦: 満州国演義五 (新潮文庫)

灰塵の暦: 満州国演義五 (新潮文庫)

 

 

唯一心を許せる友を失った次郎の喪失感が、心に染みる。物語は、盧溝橋事件から南京占領へと日支全面戦争の道を進んでいく。とても重い一冊だった。戦勝国側の倫理観や政治的理由に基づいた価値観で、軍部の暴走や残虐性を指摘し責任を押し付け、巻き込まれた市民という体で無責任に嘆くのは容易いが、彼らの行動を後ろから支援し煽っていたのは、目先の利益や感情だけで、深く考える事無しに反応していた一人ひとりの日本人だ。右も左も貧富も関係がない。今も同じ状況は続いている。100万人の提灯行列が薄ら寒い。そこに加わらない自信はない。