「雷の波濤 満州国演義七」 読書メーター

雷の波濤 満州国演義七 (新潮文庫)

雷の波濤 満州国演義七 (新潮文庫)

 

ナチス・ドイツの電撃的進行、満ソ緊張と泥沼化が続く支那事変。皇軍南進から太平洋戦争勃発。全ての国に絶対の正義はなく、国や個人の思惑、人種への偏見や利権が渦巻いているだけだ。誰一人この戦争の責任を逃れる事はできない。施政者を弱腰と批判し、感情的にさらにと望んだ一般の市民もだ。軍、政府官僚の責任を回避し有耶無耶にする体質、己を恥じないトップと大衆、全ての登場人物たちへの著者の視線は冷酷だ。告発もしなければ赦しもしない。救いがないのは、今の日本が何も変わっていない事だ。絶望を感じながらも目を離す事ができない。