「残夢の骸 満州国演義九」 本 船戸与一 読書メーター

 

残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)

残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)

 

 満州国興亡。読後に残ったのは、深い虚無と寂寥だ。敷島四兄弟と間垣が象徴する誰もが、歴史の流れには逆らえず、無力に堕ちていく。敗戦を迎えた四男にすら救いや希望が与えられない。長大な物語の影に流れている、明治維新以降の薩長を中心とした日本の在り方、為政者や軍人、市井の日本人の在り方への、静かに冷たい視線は今に通じるが、会津の復讐者すら取り込まれ無様に消えていく様を見せつけられれば、救いや希望をこの先に見出す事が難しい。自虐史観に陥らず、昭和前期を圧倒的な小説としてまとめこの世を去った著者に改めて感服する。