「足跡姫」 舞台 NODA MAP 例えその身は滅んでも


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池袋芸術劇場。

前回の「逆鱗」とは異なり、往年の多層な解釈と大仕掛けなドンデンの展開ではなく、ある意味ストレートな舞台だった。

 

亡くなってしまった勘三郎へのオマージュと言うだけあって、彼への想いや歌舞伎、演じる事への野田秀樹ならではの想いをストレートに、隠喩的に、多義的にまとめ上げた内容だった。

 

ラストシーンの桜の美しさ。その中で妻夫木聡演じる歌舞伎作者のさるわかが語る舞台と役者の在り方に胸が熱くなった。

あえての女歌舞伎が、出雲のお国と足跡姫の行く末から二度と陽のあたる場所に登場できなくなる代わりに、女形の歌舞伎へと繋がっていく。

幕が降りれば虚構の舞台での出来事はリセットされ、明日へ続いていく。

たとえ今は消え去っても江戸の時代からいまこの場所へと役者の想いは代を重ねて連なっていく。

そんな叫び、に心が震えないわけがない。

 「肉体を使う芸術。残ることのない形態の芸術」の辛さを勘三郎への弔事で読んだ三津五郎の言葉へ応える野田秀樹の姿勢や姿が、強く印象に残る。

 

野田秀樹勘三郎を失ってしまった事の悔しさとそれを乗り越えるための決意が、衒いもなく繰り広げられていく舞台を他の観客たちと共有できた事が嬉しい。

 

カーテンコールの最後、野田秀樹独りが舞台に残り、センターに正座しお礼のお辞儀をする姿に、歌舞伎の口上に繋がる役者の姿が重なり、涙が流れた。