『蜜蜂と遠雷』 恩田陸 本 読書メーター

 

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

読み終わった今、途方もない幸せに浸っている。作中ピアノコンテストを通して、登場人物たちが音楽を奏でる事の幸せに包まれているように、小説を読む事で到達した『この瞬間』の言葉にならない溢れる喜びを実感している。この小説は演奏される音楽を言葉で再現しているのではなく、音楽を聴いた時に感じる人の姿を言葉で表しているのだ。言葉が主者だ。だから、最初の一ページ目から心が震え、最後まで感情を鷲掴みにされるのだ。その体験のもとになった曲を渇望するが、作中の言葉が見せる音楽はこの世に存在しない。なんて幸せな読書体験だろう。