『愚行録』 貫井 徳郎 本 読書メーター

 

愚行録 (創元推理文庫)

愚行録 (創元推理文庫)

 

 愚かなのは、登場する被害者夫婦、犯人、インタビューを受ける人々だけじゃない。この本を読んでいる自分自身も愚かなんだと静かに気付かされる嫌な一作。読者と言う安全な位置から、イケてる夫婦の若気の愚行をやっちゃってるなと笑い、彼らを語る人々の自己擁護や小市民的なプライドやらを悲しいなと憐れむ。が、ふと自分を省みると、彼等全ての言葉や行動や心理はそのまま自分が普段行っていることと同質だと気付き、とたんに嫌な気分になる。最後の数行で語られる、一生懸命に頑張ってきた行い、結果としては愚行だが、への思いは切実で哀しい。