『ZIPANG』 映画 これぞバブルの徒花だ。痛快娯楽時代劇ここにあり。

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無限の住人』鑑賞前に、原作に影響を与えたって話を聞き、Netflixで鑑賞。

林海象監督の第二作。西洋環境開発製作、堤康二プロデュースという、バルブ時代のセゾンカルチャーど真中の、時代の徒花のような大バジェットの作品だ。

脚本は監督と共同で作家の天童荒太が本名の栗田教行名義で参加し、ストーリーボードは雨宮慶太、主題歌はX(ジャパンの付く前)の「ENDLESS RAIN」だよ。当時としてはかなり最先端な顔ぶれで、邦画らしからぬ娯楽大作を作ろうって意思がビシビシと伝わってくる。

 

公開の1990年当時、たぶんシネセゾンで鑑賞した記憶がぼんやりとあったが、内容はほとんど覚えていなかった。地獄極楽丸のネーミングと謎の刺青男くらいはなんとなく印象に残ってた。

 

内容は、当時の惹句にあるように「痛快・超時空活劇」だ。

高島政伸が演じる無敵の山賊地獄極楽丸をはじめとして、伝法な口調が可愛い安田成美の鉄砲お百合、謎の金塗りの平幹二朗東映忍法時代劇から抜け出したような成田三樹夫、そして監督の永遠のヒロイン鰐淵晴子が、それぞれの役を外連味たっぷりに演じていて、最初から最後までエンターテインメントに徹しているのが、観ていて痛快だった。

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邦画らしい恋だのを語るシーンは退屈だったけど、全体の中では添え物みたいなもんで、豪快な地獄極楽丸の殺陣、鉄砲お百合との掛け合い、時空を超えたジパングでの活劇が次々と展開され、あっと言う間にエンディングだった。拳銃を仕舞う際にちらりと覗く10代の安田成美の太股もなかなかに素敵だった。

今風の洗練は一切ないし、SFXだった今見ればちゃちだけど、創作の力強さと、画作りの高い技術は、今でも色あせていない。

ジパングに到着してからジパング王と女王の居る城の最上階を目指すシーンのカメラの動きなんて、ドローンのないあの時代どう撮ったんだろうってくらいの高さを水平に移動する。このシーンの空間処理はなかなか凄いなと感じた。ちなみにこのシーンでは秋吉満ちるが歌らしきものを唄っていてなかなか贅沢な脇役感を醸している。

 

で、『無限の住人』への影響は、冒頭地獄極楽丸が100人の追っ手を相手に、ギミックあふれた数本の刀をつかって繰り広げる大立ち回りの面白さだろう。

このシーンと、その後の青い忍者との立ち回りは、爽快で痛快だ。狭い場所、広い場所、山道と次々と走り抜けながら、短剣、長刺し、仕込み刀など次々と得物を変えて斬りまくる。

時代劇の面白さの一つは間違いなくこうした斬り合いだ。緊迫感溢れる一対一の真剣勝負も捨て難いが、スクリーンを縦横無尽に駆け巡る一対多の対決は、映画的な面白さだ。

原作の作者も、さぞやこの爽快感と奇抜な斬り合いに心踊らせたんだろうな。

まあ、原作は未読なままだけど。

 

理屈や構造、ストーリーの含意や深みで楽しむ映画や、感情の襞を刺激され熱い感情の動きを生む映画も良いが、こういう単に爽快な気分を味わう映画も悪くない。

いや、これはこれで楽しい。

スクリーンってのはそういう映画のために、広いんだとも思う。

 

さて、この映画を経て書かれた原作をもとにした、どうやら本気らしい三池監督の映画『無限の住人』はどんな感じで仕上がっているのか。

明日鑑賞してきます。