『スペードの3 』 朝井 リョウ 本 読書メーター

スペードの3 (講談社文庫)

スペードの3 (講談社文庫)

 

自意識ってやつは厄介だ。ぐるぐると頭の中で答えの出ない独りよがりな思いが渦巻いて、周りのことも自分のフィルターでしか考えられなくなる。ちょっとした妥協や寛容、自分を許すことができれば、少しは軽い気持ちになることができるのに、半世紀近く生きていても簡単には乗り越えられない。それができないからこそ人間で、日々生きることの苦しさであると同時に楽しさでもあるのだけれど。作者はこの本を通してそんな気分の私でも、心を軽くしてくれる希望を与えてくれる。決して消えることはないけれど受け入れて生きていく事の可能性を。