『夜明け告げるルーのうた』 映画 好きな事は好きだと叫べ そうすれば万事OK!

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湯浅監督久しぶりのオリジナル長編アニメーション映画。

やっぱり動くことが楽しい。スクリーンに展開する色、響く音、映画館でアニメーション映画をみることの悦びをたっぷりと堪能できる作品だった。

中学生の主人公たちが人魚ルーとの交流を通して成長する物語がすがすがしい。

影の中でしか生きられない人魚と、影に覆われた街で鬱積していた中学生が、音楽を通して触れ合って、自分の好きなことを「好きだ!」と言えるようになることで、明日へ一歩を進めていく。なんて気持ちのよい映画なんだろう。

 

同時に、大人のそれぞれの勝手な行動が理不尽な邪魔になってルーと主人公たちに共感していた気分に水をさされ怒りが湧いてくるが、邪魔になる行為の理由はそれぞれに理解できる物でけっして悪気があるわけでないのが、物語の最後のハッピーエンドにつながっていく。

誰もがそれぞれの想いや理由で良かれと思っている事が、他の人たちには障害になっていくことを示しながら、きっちりとそうした想いを一つひとつすくっていく展開は、監督の人への優しい視線によるものだろう。

タコ婆の怒りが、彼のキス(噛みつき)で消えていったシーンや、主人公の祖父が、ルーたちのために傘を開き、母と想いをつなげていくシーンには、涙が流れた。

何よりも物語の最後に登城人物と観客の全員に希望を与えるのが、歌と踊りとアニメーションの動きと溢れる光であることが嬉しい。

 

ダンスを夢見て都会に出たが、帰郷して外洋養殖で成功した青年。

モデルとして都会に出たが、帰郷して町内放送のウグイス嬢になりながらこっそりとカフェを作る夢を実現させている憧れの女先輩。

バンドに夢をかけた男性とダンスを夢見る女性は結婚し都会に出るが離婚し、男性だけが街に戻り慣れない肉体労働に汗をかきながらも息子をまっとうに育てている。

夢を見て、挫折して、それでも受け入れてくれる影の街日無し町で、それぞれの生活を送り過ごしている人たちも、好きをモチベーションにして行動するルーと触れることで、踊り出し楽しい時間を遊び、街の危機を一緒に乗り越えることで、今までの街が光溢れる街に変わっていく。

光溢れる街では人魚たちの姿は見えなくなったが、その代わりに人々の心のなかに人魚は生きている。みんな人魚になったとも言える。

 

大人ではなく、子供にこそ見て欲しいと監督がこの作品を作っただろうことが伝わってくる、とても希望にあふれた物語だ。

好きって気持ちで行動すること、たとえ才能に限界があったとしても、好きって言える気持ちを持ち続けることで、影のある世界は光の溢れる世界に変貌する。

 

アニメーションの動きの楽しさ。希望にあふれた優しい物語。

劇場を後にするときには、幸せな気分で明るく明日を楽しみにできる、そんな気持ちのよい映画だった。

 

追記:

ぶらぶらとほかの人のブログ読んでたら、湯浅監督の次回作、Netflixで『デビルマン』だと知った!

シルエットのデビルマンケモノヅメ』行くんか??ガーッと行くんか?

楽しみすぎる。