『東京難民 (上)(下)』 福澤徹三 本 読書メーター

東京難民(上) (光文社文庫)

東京難民(上) (光文社文庫)

 

 主人公の転落の姿は、そのまま私の姿だ。上巻の些細なきっかけで『普通』から外れ芋づる式に堕ちていく姿、最悪な底辺に転落しつつも格好をつけ優しげで余裕のある安易な判断をしてしまう姿に、学生時代の自分が重なってしかたなかった。もう四半世紀が過ぎてしまったが、月末の所持金に悩み小麦粉一袋と卵ワンバックで一週間を乗り切る生活を送った事は先日のように思い出せる。人はほんのちょっとした事で『普通』から転げ落ち、簡単には這い上がることはできない。主人公が甘いと言うのは簡単だが、この恐怖は日本には何処にだって転がっている。